旅に行った気になれる本の感想① 若菜晃子「街と山のあいだ」

本の感想

こんにちは、30代のシングルマザーおはなです。

おはなは旅行が大好きですが、仕事をしていると長期間のお休みはなかなかとれないですし、子どもが小さいと移動距離もそう遠くへは行けません…。
そういう方がほとんどなんじゃないかな?と思いますが「旅行に行きたいな〜」と思う時って、行けない時だったりするんですよね。

そういう時、私は「旅をした気になれる」本を読むことにしています!
今日は、そんな中でも気に入った本をご紹介できればと思います。

今回は若菜晃子さんの初の随筆集「街と山のあいだ」

若菜さんは、もともと出版社にお勤めで、登山関係の雑誌の編集に携わられていた方で、登山がライフワークになっていらっしゃるそう。

若菜さんは旅の三部作が有名なのかなと勝手に思っているのですが、もちろんそちらも読んでいて、私はその三部作の随筆集のあとにこの「街と山のあいだ」を読みました。
三部作はもっと旅感があるので、またそちらもご紹介したいですが、
「街と山のあいだ」には、編集部にいらした時のサラリーマンとしてのストーリーや、登山に関連した感情の機微なども話の中に織り込まれていて、それがとっても親近感を感じるのです。
特に、友人でもなく単なる同僚でもない、なんとも名付けることが難しい、人との絶妙なあわいにある関係性を描かれるのがとてもお上手だなと思います。
旅行って非日常ですが、やっぱり非日常を感じるのって日常があるからこそ。
旅先で日常の人間関係に想いを馳せるということも珍しいことではないのではないかと思います。

私がそうしたら中で特に印象に残ったのは、「木村さん」というタイトルのエッセイ
お正月に登った山から見えた印象的な白い建物。なんとなく見ては行けないような雰囲気を感じた若菜さんは印象に残っていたそう。ところが下山したあと、元同僚と会っていた際に、入社後最初にお世話になった上司がその白い建物の病院に入院していると耳にします。
その上司の名前が木村さん。
木村さんは若菜さんが新入社員の時にすでに白髪で杖をつかれていた50代の方で、
「一冊本を作れるようにならなければ編集者と名乗ってはいけない」とおっしゃるような、厳しくも仕事に対して誇り高い方だったそう。知的でウィットに富んだ木村さんとの一コマ一コマを思い返す若菜さん。
木村さんのお人柄を踏まえて、お見舞いに行くべきか行かまいべきか悩む描写に、若菜さんはとても誠実な方なのだと思いました。
最終的には生きているうちに会わないことを選び、お葬式で再会を果たすことに。最後に眼鏡をかけていらっしゃらなかったことを心配する記述に自然と涙が浮かびます。いろんな瞬間が重なり合うことで今があることを温かく意識させられました。
こんなふうに、思いがけず日常に切り込んでくるような旅の思い出ってありますよね。おはなは残念ながら、木村さんのような素敵な上司には巡り会えなかったので、木村さんとの関係性が羨ましいと思いつつ、若菜さんの記憶を追体験することで一期一会を改めて感じることができました。

もちろん、登山のストーリーも大変面白いです。
中でも「山でこわかった話」で描かれる北アルプス白馬岳の山スキーでの話はハラハラしました。登山専門誌の編集部時代に、スキー初心者の若菜さんは断れず、編集長以下職場の主に先輩方と山スキーへ出かけたそう。
言い出しっぺの編集長が怪我で参加できなかったり、登山開始地点までのゴンドラが運休だったりと、何度か中止を期待する場面はありつつも、結局実施されることになってしまいます。
山頂まで登り、雪渓でテントを立て職場の先輩たちと一夜を過ごします。ここでも鍋を作っているあいだにガスボンベから火柱が上がって、前髪が焦げてしまうなどの事件がありましたが、なんとか朝になりスキー開始。
ところが、やはり初心者には滑れるわけもなく、様子を見かねた先輩たちに歩いて降りることを許可されます。スキー道具を背負いながら、かなりの斜度の雪山を降りていたそう。
その時!前のめりに転んでしまい、「つぁーっとすごい勢い」で落ちていってしまいます!(こわい…!!)周りからの「なんでもいいから止まれ!」「頭を上にしろ!」という声をききながら必死で頭を上にして、なんとか指を雪面にたてて止まった若菜さん。(ヨカッタ…)
そのあと、心配して駆け寄ってきた先輩には「おう、若菜、ずいぶん距離稼いだな」と軽口を言われたそう。笑
こうしたこわい体験も今では「山ではひとりひとりの性格がよく出て、ただもうおかしい笑いばなしにしかならない」と振り返る若菜さん。ここにも素敵な人柄が滲み出ているなぁと思いました。

おはなは本格的な登山といえば、屋久島くらい。
学生時代の親友と2人で「屋久杉がみたい!」と計画して、とりあえずの登山グッズを揃えてフェリーで屋久島へ向かったのがなつかしいです。
もののけ姫の犬神のモロの君が座っていた岩のモデルと噂の「太鼓岩」はあいにくの濃霧でまったく景色は見えませんでした。笑
屋久杉ももちろん見に行きました。
どちらも、普段は登らないような巨大岩の斜面を「え、これ登るの?!」と動揺しながら一心不乱に登ったり、「これ滑ったらやばいな…」という高さと急斜面を妙に落ち着いた気分で見下ろしたり、今でもまざまざと覚えているのが不思議です。
親友とはこれといった大事な話をしたわけじゃなく、いつもの他愛のないバカ話ばかりしていた楽しい記憶があります。もちろん登る時はほぼ会話はありません。(それどころじゃない)
その時間を共有できた心の底の方に残るあたたかさは今でも私の良い思い出です。
運動が苦手な私は登山からはなかなか縁遠い人間ですが、若菜さんの本を読んでいると、人や時間に縛られず「自然に浸りたいな〜」という気持ちにさせられます。
普段は自分でできないことを体験したような気持ちになれるのが読書の良いところでもありますよね。

登山が好きな方も、旅行が好きな方も、ちょっと人間関係に気づきを得たい方にも読んでほしい一冊です。

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別な本もご紹介したいと思います!では、また!

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