旅に行った気になれる本⑤片桐はいり「グアテマラの弟」

本の感想

こんにちは、おはなです。

おはなは旅行が大好きですが、仕事をしていると長期間のお休みはなかなかとれないですし、
子どもが小さいと移動距離もそう遠くへは行けません…。
そういう方がほとんどなんじゃないかな?と思いますが「旅行に行きたいな〜」と思う時って、
行けない時だったりするんですよね。

そういう時、私は「旅をした気になれる」本を読むことにしています!
今日も、そんな中でも気に入った本をご紹介できればと思います。

今回は、片桐はいりさんの「グアテマラの弟」をご紹介したいと思います。
片桐はいりさんは、私の大好きな映画のひとつ監督・荻上直子さんの「かもめ食堂」で知り、
その存在感に見入ってしまった俳優さんでした。
片桐さんが「かもめ食堂」の撮影のあとに、
フィンランドを一人で旅したエッセイに「わたしのマトカ」があるのですが、
これがまた面白く、その次に読んだのが、この「グアテマラの弟」でした!
(「わたしのマトカ」もまた別の機会にご紹介したいと思います!)

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「グアテマラの弟」はなんと言っても、書き出しが面白くって好きです。
「歯ブラシの替えどきがわからない。新しい歯ブラシをおろして、
その新鮮さを味わえる期間はとても短い。
とがった毛の先が歯と歯の間にうまいことおさまって、
歯みがきの時間が楽しいのはほんの一週間ほどで、そのあとは特になんの感動もない朝晩の行事になる。」
はて、歯ブラシ…?グアテマラの話ではなかったか…?と思いつつ(笑、
読み進めていくと、思いもよらぬところで片桐はいりさんの弟が登場します。
はいりさんが実行している小さなジンクスもとい「個人的なしきたり」。
それが「弟から連絡があるまでは、歯ブラシを替えてはいけない。」なのです。

年子の姉弟だった2人は中学校に上がった時あたりから一言も口を聞かないほど、仲が悪くなってしまったそう。思春期特有ですね。
そんな弟さんは、大学生の時に訪れた南米旅行でグアテマラが気にいり、
大学院修了後にはグアテマラへ移住してしまったのだそうです。
そんな弟さんはグアテマラに行ったきり、なかなか連絡がなかったようでした。
当時は電話すらつながるのが遅く、「会話がずれてかぶって、大昔の衛生中継のような話しにくさ」だったそうです。
当時、片桐はいりさんは10年間入っていた劇団を辞めた時期で、
思いついて、単身グアテマラに弟に会いに行くことに!
これが、はいりさんにとって1回目のグアテマラ来訪でした。
そのことを弟さんに伝えるとファックスを持ってくるように頼まれます。
(え!重いし持っていくの大変…!笑)1993年のことだったそうです。
はいりさんが、ファックスを届けてから、
半年に一度か二度は実家に弟さんからファックスが届くようになったようです。
今は通信機器も発達して過ぎて、どこに住んでいても気軽に連絡が取れてしまうけれど、
ちょっとしたコミュニケーションに喜びが生まれるコミュニケーションツールも、
今になってみれば乙ですね!

色々大変なこともありつつ、現地で弟さんに会うと、
グアテマラ人のシングルマザーと結婚して、息子もでき、
すっかりグアテマラが自分の居場所になっていた様子を目のあたりにした片桐はいりさん。
奥さんの経営するスペイン語学校で講師をしながら、観光地の日本語ガイドをしたり、
日本では考えられないほど、弟さんが現地の人にすっかり馴染んで、
グアテマラ人として暮らしている様を見て、
はいりさん曰く「遣唐使のおつかい」の結果をご両親に
「この人を今日本に連れ戻したところで、
ここより幸せになれる可能性は皆無と思われます」と報告するに至ったのだそう。
日本で生まれ育って、旅行でしか海外に行ったことのない私は、
住んだことのない場所に強く惹かれた経験がないので、
「はいりさんの弟が魅了されたグアテマラってどんなところなんだろう?」とそれだけで興味が湧きました。

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「グアテマラの弟」は、一般的な観光地を巡るようなストーリーではなく、
弟さんを通してはいりさんが見た、グアテマラの日常生活や、文化、おおらかな物事の捉え方などを知ることができ、より南米グアテマラの深いところを感じることができます。
そして、弟さんがキーパーソンになっていることもあり、
はいりさんのご家族の話が盛り込まれている点もとっても面白く読むことができました。
家族には家族の数だけ形があると思いますが、共感できる部分や笑える部分もあり、
ストーリーの端々から伝わる、家族特有の暖かなつながりに共感して、
うるうるする部分もあるのですが、それにも笑いの要素を混ぜて書かれる、
はいりさんのライティングセンスが好きです!

上述した1回目の訪問と併せて、2回目の訪問のストーリーも織り交ぜられています。
はいりさんのお父様が亡くなられた後、
お母様と一緒にグアテマラに連れて行こうと来訪を計画していたのですが、
土壇場でお母様の気が変わってしまい、また一人でグアテマラへ行くことになります。


いつも動き回って家事をしていた自分のお母さんと、
弟さんの奥さんをはじめとした、グアテマラの方々の「休むことを大事にする価値観」との対比もとても興味深かったです。
はいりさんのお母様は「昭和のど根性」が染みついたような方で、
はいりさんが子どもの頃から働きっぱなしの方だったそうです。
家事に勤しんでいて、ゆっくり話せないお母さんに、
「どうやって簡潔に面白く今日の出来事を伝えるか?」を考えながら帰宅していたという小学生のはいりさん。(微笑ましいお話です!)
年を取って腰の曲がってからも、ペースは落ちても、
昔と変わらず休む間もなく働くお母さんを見ていたため、
グアテマラの生活に衝撃を受けるたそう…!
グアテマラのお母さんたちは、お昼ご飯に全力を注いでお料理をして、
そのあと何をおいてもすぐシエスタ、つまりお昼寝をするそう。
さらに言えば、中流階級の弟さん一家にも、
たとえば夕食のお皿を洗うだけの人、お掃除をしてくれる人、など
ちょっとしたことをしてくれるお手伝いさんがいるのです。
ちょっとしたお金を貯めておくなら、
誰かに仕事を作ってあげてお金を回して、自分も楽をした方が良いという思考が根付いているそう。
真面目すぎる日本人には見習いたい部分もある生き方ですね。
はいりさんの文章からは、それがけっして「ぐうたら」ではなく、
目の前の現在を丁寧に生きているグアテマラの温かい生活が伝わってきます。

それ以外にも、弟さん一家に出入りする謎の男の子との交流や、
路上に住むおじさんと、弟の奥さんペトラさんとの不思議な交流のお話、
弟さんが日曜にほぼボランティアで、日本人同士が交流する場としての「日曜定食」で、
グアテマラで調達できるもので日本料理らしきものを作るお話など、
グアテマラの歴史や風土、文化なども織り交ぜた、面白いストーリーがたくさん!

南米にはまったく足を踏み入れたことのないおはなですが、
遠くの地に思いを馳せ、読み終わったあとは自分の視覚が広くなるような、
そんなおおらかな気持ちが残る一冊でした。

それでは、また!

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